2010.10.18 Monday

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2010.11.01 Monday 13:20

日本人の舌に合うコメ

 91年6月にフィリピン・ピナツボ火山が今世紀最大といわれる大爆発を起こしました。

数年の間に異常気象が発生するのは、ほとんど確実だったのです。

実際に私は、91年の調査報告で、現在のようなコメ不足が起こることをかなり正確に言い当てています。

8月に出した『世界のコメの安全性は?lI輸出国のコメ事情』(日本子孫基金)の中の「短期的展望」で、「いきなりコメ不足も」と見出しをつけて「3年以内に200万トンくらいは減る可能性がある」ので、「200万トン(玄米換算で160万トン)輸入せざるを得なくなった」と仮定しました。

そして、日本人の舌に合うコメとまずいコメの輸入量、国・地域別の輸入量、農薬汚染米の輸入量などについて推定し、輸入量は不足しないが、おいしいコメは足りないので、いきなりコメ不足になると解説を書いた。

3年目に入ったとたんに、コメの輸入が発表され、輸入量の数値があまりにも似ていたから、書いた私自身が驚いたほどです。

農政は、歴史の教訓をほとんど無視した。

いや、そのふりをしたのだと思われます。

ピナツボ火山の大噴火に対応して91年秋から異常気象対策を進めるべきだったが、銘柄米への偏重は相変わらずで、大幅減反も継続した。

92年は作況指数が101だったにもかかわらず、10月末の政府在庫は26万トンしかなくなった。

生産量が約1000万トンなのに1年で82万トンも在庫が減り、在庫は事実上なくなってしまった。

これはどうみても異常事態です。

減反面積を減らして生産量を増やそうとした政策が失敗したのだから、潜在供給力が低下しているのだが、にもかかわらず、農水省は93年にもわずかしか減反を緩和しなかった。

これでは、正常にコメが収穫できていたとしても輸入せざるをえなかった可能性が高い。

そこを大不作が襲ったため、米不足は重大な事態になってしまったのです。

大木一雄 (食糧評論家)

2010.10.31 Sunday 13:19

コメ輸入

 1993年12月14日、細川首相はGATT・ウルグアイラウンドで、ミニマムアクセス(最低輸入義務)を受け入れることを表明しました。

こうして決着してみると、政府がどのようにコメ開放を仕組んで国民の過半数を納得させたのかが見えてきました。

93年の稲作は、戦後最大の大凶作だった。

そのため、コメの輸入が始まり、タイ、アメリカ、中国・オーストラリアなどからコメが入って来ています。

けれども考えてみると、最近までコメは余っていたはずでした。

余らないよう3割近くも減反しているはずでした。

それが、たった一度の大凶作だけで、こんなひどい事態になるのでしょうか。

コメ不足で大量に輸入せざるを得ない事態になり、とうとう輸入が決まって国民の意識が輸入やむなしと思い始めたときに、ミニマムアクセスの調停案が出てきて、アメリカからの輸入第一船が到着した直後に政府は受け入れを表明しました。

これでは、あまりに筋書きができあがりすぎているではないでしょうか。

異常気象は自然現象なので、そこまでは予測できないと思われる方もおられるでしょう。

普通ならそのとおりだが、今回は違います。

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.30 Saturday 13:13

研究

 研究をしたのは井田明氏ら「四国農業試験場、土壌保全研究室」のスタッフです。

彼らの研究論文は専門性が高いので、やや簡略にして紹介しよう。

彼らは四国の物部川上流域の傾斜地にある棚田水田を、(1)放棄した場合、(2)ユズ園に転換した場合、(3)コナラ園に転換した場合、に分けて、その後、土壌がどうなったかを調べました。

すると、もともとの棚田では土壌は流出しなかったのに、(2)では一反あたり毎年1・6トン、(3)では同1・9トン、(1)ではなんと同3・5トンもの土壌が流出したのです。

研究のごく一部分の紹介であるが、これによっても、「コメの自由化」により耕作が放棄された水田はたちまち国土を変形させていくことが想像されます。

このほか、千葉県市川市などで、水田が虫食い状に宅地にされていく地域で、近くを流れる真間川と大柏川の洪水を防ぐために、遊水池として水田地跡地を利用していることはよく知られています。

こうした農地の『派生的効用』についても、普通の人間の感覚さえもっていれば誰でも納得できることでしょう。

農地をつぶした後に、他の方法でこの効用を回復しようとすれば、農業予算の節約よりずっとたくさんの費用がかかる。

『食糧が安くなる』などという目先のニンジンに目がくらんで、安くなった分よりたくさんの税金をとられるようなバカな選択は決してしないことです。

大木一雄 (食糧評論家)

2010.10.29 Friday 13:12

農業予算を節約

 農業予算を節約するために、食糧を外国から輸入すべきだという主張には、こうしたことに対する配慮がすっぽり抜け落ちていると思われます。

あるいは日本列島そのものを食いつぶしても農業予算を節約すればいい、という暴論であるのかもしれません。

ところでこのような農業の効用を、数量的データとして試算するだけではなく《どこかの農業地域で農業を放棄したせいで、その地域に水害が起きるようになった》というような実例を農業関係者たちは把握しているに違いない、と私は思いました。

『農業の国土保全機能』などと抽象的なことを言うより、そうした実例を見せた方がずっと説得力が高いと思えたからです。

そこで、農業関係のいくつかの組織を訪ねたのだが、「そんな資料は収集していない」とのことで、私はいささか拍子抜けしてしまった。

農業の存続を先頭にたって推進していくべき立場にあるはずの人たちがどうして、そうした国土破壊の実例をケーススタディしていないのだろうか?やむなく友人、知入のネットワークをとおして、そうしたケーススタディの存在を探しました。

そしてようやく見つけることができました。

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.28 Thursday 13:09

国土を守る農業

 農業の効用としては、食糧安保ばかりでなく、その国土保全あるいは環境保護機能も重要なものとして認められています。

その機能を項目別にあげると、1水資源酒養

2土砂流出防止

3土壌崩壊防止

4土壌による浄化

5保健休養

6野生鳥獣保護

7酸素供給、大気浄化

などとなっています。

(農水省官房企画室制作。

ここには森林の効用も含まれている)これらのほかに、先に触れた景観そのもののもたらす効用も考えられるが、これにはもはや効用などという言葉を使うべきではないでしょう。

『ふるさと』そのものです。

それはわれわれ日本人の歴史の中に溶けこみ、また現代日本人一人一人の生い立ちの中に溶けこみ、われわれの文化に反映され、精神のありようや感受性となっています。

1〜7の機能を農用地と森林以外のもので補うとすれば、55年度の貨幣価値で36兆6200億円もの膨大な金がかかると試算されています。

この数字そのものは基準のとり方などで多少の増減はありうるだろうが、農業にこうした効用があり、それを他のもので補えば、多額の資金がかかることは誰でも想像のつくことでしょう。

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.27 Wednesday 13:06

農業バッシング

きわめて常識的でバランスのどれた考え方に思えるが、日本国内では、後で取り上げるような『だめにする』農業バッシングがなぜあんなに声高に叫ばれるのだろうかと、同朋の心の中を思い、いささか寂しい気がします。

日本人は工業化に力を注ぎすぎてきた、というばかりでなく、アメリカの主張に耳を傾けすぎてきたという側面もまた、バランスのとれた農業観をもてない理由だろうという気がします。

そしてよく考えればこの二つはほとんど同じことです。

日本はアメリカの広大な市場を頼りに工業化をフルスピードで推しすすめ、経済大国となってきました。

工業化の前提にアメリカの市場があったのです。

仮にアメリカが日本に対してマーケットを閉ざしたら、工業はこううまく育たなかったろう。

そこで日本は工業の利益を守るたあ、アメリカの機嫌を損なわないように、その主張をよく聞きいれるわけです。

日本が(とくにアメリカの)外圧に弱いのはそのせいです。

国力ではいざ知らず歴史や文化の面ではアメリカよりずっと兄貴にあたるイギリスは、無作法者の巨人『アメリカ』の主張を適当にあしらい、悠々と自国の立場を貫いています。

いやイギリスばかりではない。

フランス、ドイッなどもまったく同様です。

アメリカの国益むきだしの要求に驚いて『食糧安保論』を忘れてしまう国などありはしない。

日本ももう少しEC諸国を見習うべきでしょう。

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.26 Tuesday 13:04

堅実な食糧安保観

 ジョン・デボス。

彼はUKレジスター・オブ・オーガニック・フード.スタンダードのスタッフです。

「かつて、一国レベルでの食糧自給というのは戦争に備えてという考え方があったけれど、現在では戦争の危険はほとんどなくても、EC内をとってみても、イギリスは畜産ばかりで、フランスやドイッは穀物ばかりというのは危険だと思っています。

アメリカから買えば安いのはわかっていますが、もう一度、どこかでチェルノブイリ事故のようなものが起こらないとは限らないし、あるレベルまでの一国内での保護は当然あってしかるべきだと思っています」

非常に堅実な食糧安保観を語っています。

こうした安保観は自由競争をすれば勝者になるはずの農家でさえきちんと保持しています。

語るのはロンドンの北東150キロにあるコルチェスター市で700エーカーの農場を経営するヒュー・グレイです。

「EC内で本当に自由競争をやれ、と言われたら、私は絶対に勝つ自信はありますよ。

しかしそうやって淘汰していったら、ある国の農業をつぶし、その景観も損なうだろうし、相互にこれまではなかった作物の病気なども伝染するだろうし、望ましくないことがいろいろ起きてくるだろうと思います。

だから各国ごとの農業生産の一定のバランスを保つことは、どこの国でも合意してくれるのではないですかね」

もう少し視野を広げた意見を学者から聞こうと思います。

マーシュ教授です。

「かつて、われわれは農産物を買うとき、食べ物にお金を出すという意識をもっていました。

しかし今では食べ物に対してだけではなく、農業の副産物、たとえば国土であるとか、田舎暮らしだとか、環境保護だとか、文化だとか、そういったものにもお金を出しているのだと考えなくてはならなくなりました」

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.25 Monday 13:03

価格支持政策

 イギリス農業は強力な価格支持政策を導入して、戦後急速に自給率を高めることに成功したのです。

その後、イギリスはECに加盟して共通農業政策のもとに農業を行うようになり、まもなく過剰問題に悩むような作物も出てくるが、ここではそのプロセスについては省略してイギリスが、現在は食糧安全保障についてどう考えているかを紹介しよう。

アメリカは一時、「国内の農業保護費用は10年間ですっかりなくそう」などと暴論ともいえる提案をウルグアイ・ラウンドにもちだし、日本に対して強力な姿勢でコメの自由化を求めていました。

しかしイギリスの農業関係者は一様にその提案をムチャだとして、まともにはとり合わなかったそうです。

当時に比べてアメリカの要求もいくらかマイルドになっているが、当時のイギリス国内での反応は彼らの『食糧安保感覚』をまざまざと示していると言えるでしょう。

まず、NFUの国際部長、マーチン・ハウォースはこう言っています。

「日本に非常に同情しますよ。

アメリカは日本に対してはプレッシャーをかければいいと思っていますから、そんなムチャなことを言ってくるんでしょう。

10年以内に農業保護費用をゼロにするなんてクレージーですよ。

そもそもアメリカの農家自身、そんなことに賛成していませんし、アメリカの農家は議会において支持者をたくさんもっているので、議会がそんなことはさせないでしょう」

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.24 Sunday 13:01

自給率回復

 第二次大戦中はほぼ30%くらいだった自給率が約10年後の1956年には47%ほどにまで回復しています。

昨今の日本では食管制度や農業予算に対して国民世論は冷ややかであるが、当時のイギリスではどうであったろうか?一言でいえばほとんどあらゆる勢力が47年「農業法」を強力に支持したのです。

レディング大学のもう一人の教授、J・マーシュ教授はこう説明する。

「これは保守党、労働党両方の支持を得ていました。

政党ばかりでなく、産業界をも賛成の側に巻きこんでいましたし、労働者階級の人びとも食物不足を恐れていたので、自給率の回復に安心させられました。

バーミンガムの工業地帯に農業保護を批判する議員もいましたが、彼はそのせいで重要な大臣をクビになってしまいました」現在の日本の農業関係者から見ればうらやましいような状態に見えるだろうが、日本だって昭和50年代の前半くらいまでは、とくにコメは優遇され、自民党議員の中にも『ベトコン議員』などと呼ばれた強力な応援団たちがいたのです。

両国ともにそういう状態があったにもかかわらず、その後、イギリスでは自給率を高め、一方、日本では低めてしまうことになった理由は後で触れよう。

大木一雄 (食糧評論家)


2010.10.23 Saturday 12:58

農業法

 第二次大戦が終結して2年たった1947年、イギリスの戦後農業のスタートラインとも言える「農業法」が施行された。

これこそイギリス農業を今日のように回復させた魔法の杖です。

この法律が目指したものは、(1)イギリス国内で生産することが望ましい作物を、(2)農家にとって適正な報酬と収益を考慮した最低価格で生産できるだけの、(3)安定的で能率的な農業、であるから、日本で昭和36年にスタートした「農業基本法」と似たような性格をもっています。

こうした「農業法」の目的を達成するために、政府は年次価格審議制度を設けて、(1)毎年、定期的にNFUと政府が、(2)穀物(小麦、大麦、燕麦、ライ麦)、ジャガ芋、てんさい、肉畜(牛、羊、豚)、牛乳、卵、の主要農産物の保証価格を決定する、ことにした。

要するに、日本の食管制度のようなシステムが多くの作物に適用されたのです。

だから、長い間の『自由貿易主義』で痛めつけられてきたイギリス農業は急速に息を吹き返し始める。

大木一雄 (食糧評論家)

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